相続税対策に不動産投資を活用する賢い方法とは? 

はじめに 

「相続税が心配だけど、対策の方法が分からない…」 

そんな悩みをお持ちの投資家の皆様に、不動産投資は強力な味方となり得ます。不動産は現金よりも相続税評価額が低く設定されることが多く、税負担を軽減できるというメリットがあるからです。本コラムでは、まず相続税と評価額の仕組みについて解説し、不動産投資を活用する具体的な対策方法をご紹介します。 

1. 相続税の仕組みとは? 

相続税は、被相続人(故人)が残した財産を相続する際に課せられる税金で、財産の種類にかかわらず課税対象となります。相続財産には、現金、不動産、有価証券、預貯金などが含まれます。 

  • 基礎控除:まず相続財産には「基礎控除」が適用されます。この控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。例えば、法定相続人が2人の場合は、基礎控除額は4,200万円となり、この額を超えた分のみが課税対象となります。 
  • 課税遺産総額:基礎控除を差し引いた後の財産が「課税遺産総額」となり、この金額に基づいて税率が決まります。課税遺産総額に応じて税率は10〜55%と段階的に設定されており、財産が多いほど税負担が重くなります。 
  • 納税方法:相続税は、基本的に現金一括での納付が求められますが、納税が難しい場合には「延納」や「物納」が認められるケースもあります。 

2. 評価額とは何か?不動産評価額と市場価格の違い 

評価額とは、相続や税計算の際に基準となる財産の価値です。不動産の場合、市場価格と評価額には差が生じることが多く、この「評価減」が相続税対策において非常に重要な役割を果たします。 

  • 不動産の市場価格と評価額:市場価格は一般的に売買が成立する価格であるのに対し、相続税評価額は国や地方自治体が定める基準に基づいて算定されます。評価額は市場価格の70〜80%程度になることが多く、場合によっては半分程度に評価されることもあります。この差によって、実際の資産価値よりも低い金額で相続税が課せられるため、税負担の軽減が可能となります。 
  • 貸家評価の適用:さらに、賃貸物件として運用している不動産には「貸家評価」が適用され、評価額がさらに低くなることがあります。これにより、賃貸物件は現金資産よりも有利に相続税評価されます。 

3. 不動産投資が相続税対策に有効な理由 

現金と比べて評価額が低くなるため、税負担が軽減 

例えば、1億円相当の現金資産を持つ場合、そのままの評価額で課税対象となりますが、同じ1億円を不動産投資に回した場合、評価額が6,000万円程度に抑えられるケースもあります。この差によって、相続税額が大幅に軽減されるのです。 

  • 貸家としての評価減:賃貸物件として不動産を所有することで「貸家」としての評価減が適用され、さらに評価額が低くなります。賃貸物件は評価額が20〜30%ほど低減されることもあり、より節税効果が期待できます。 
  • 安定した収益源の確保:賃貸物件は、税負担軽減だけでなく賃料収入を得られるというメリットもあります。相続後も家族が安定的に収入を得られるため、資産管理の観点でも優れた選択肢となります。 

4. 賃貸用不動産の相続税評価と税メリット 

賃貸物件として不動産を保有することで、さらに評価額を下げることが可能です。評価額を低減する要素には「借地権割合」や「借家権割合」があり、これらが適用されると、評価額が20〜30%ほど下がることもあります。 

  • マンションやアパート:集合住宅は一戸建てに比べて評価額が低く設定される傾向があり、相続税対策として非常に有利です。高い収益を確保しつつ、評価額の低減による節税効果も期待できます。 

5. 生前贈与や家族信託を活用した不動産の運用 

不動産投資と並行して、「生前贈与」や「家族信託」を活用することで、相続税対策の効果をさらに高めることができます。 

  • 家族信託:家族信託を活用すると、資産を信頼できる家族に託すことで、将来の資産移転がスムーズに進むようになります。また、不動産の相続税評価を抑えながら、資産を確実に次世代に引き継ぐことが可能です。 
  • 生前贈与:相続発生前に少しずつ不動産を移転することで、相続時の評価額を分割して抑えることができます。計画的な贈与によって贈与税の負担もコントロールし、相続時の税負担を軽減する効果が期待できます。 

6. 不動産投資のリスクと注意点 

不動産投資には相続税対策としてのメリットが多い一方、リスクも伴います。長期的な資産運用を行ううえで、以下のポイントに注意しましょう。 

  • 空室リスク:賃貸物件であっても、常に入居者がいるとは限りません。空室が続くと収益が減少し、予定通りの収益を上げられない可能性もあります。 
  • 経年による資産価値の減少:不動産は時間が経過するにつれて老朽化し、メンテナンスや改修が必要となることがあります。この費用が経営計画に影響するため、予め修繕計画を立てることが重要です。 
  • 税制や法律の改正リスク:将来的に税制や法律の変更により、相続税対策としての有効性が変わる可能性もあるため、最新の税制をチェックし、必要に応じて投資計画を見直すことが求められます。 

7. まとめ:専門家と相談し、効果的な相続税対策を 

不動産投資を活用した相続税対策は、評価額の特性を利用することで、資産を守りながら次世代に引き継ぐための有効な手段です。しかし、相続税対策にはさまざまな選択肢があり、個々の状況や目標に応じて最適な方法を選択することが大切です。 

相続税対策を検討する際には、不動産の評価方法や税制の特例について理解を深め、長期的な視点を持って計画を立てることが重要です。専門家のアドバイスを受けることで、より安心して資産管理を進められるでしょう。