法改正で可能になった木造3階建て共同住宅:木三共の課題と展望」

建築コストを抑えながら、収益性を最大化できる住宅開発の新たな選択肢。
アパート建築において魅力的な木造3階建て共同住宅、通称「木三共」。近年の建築基準法改正により、耐火建築物にしなくても建築可能な条件が整い、多くの注目を集めています。木造ならではのコスト削減効果や設計の自由度を活かしながら、収益を狙う「木三共」について今回のコラムで徹底解説します。
成立の背景と法律の改正
木造3階建て共同住宅(木3共)は、1999年(平成11年)に建築基準法が改正されたことにより、建設が可能となりました。
従来、3階建て以上の共同住宅は耐火建築物とする必要があり、主に鉄骨造や鉄筋コンクリート造が採用されていました。しかし、これらの構造は建築コストが高く、デベロッパーや建築主にとって負担が大きいケースが存在しました。そこで、建築コストの削減や設計の柔軟性を高めるため、一定の条件を満たすことで木造でも3階建て共同住宅を建築できるよう、規制が緩和されました。この緩和により、木造建築の可能性が広がり、コスト削減や収益性の向上が期待されることとなりました。
また、2019年の建築基準法第27条の改正により、地階を除いて3階の共同住宅を防火地域以外に建築する場合は、一定の条件を満たすことで「1時間準耐火建築物」を建てることも可能になりました。
木三共の建築基準
木三共を建築するには、以下の条件を満たす必要があります。これらの基準は、安全性と快適性を確保しつつ、木造建築の利点を最大限に引き出すものです。
- 主要構造部の1時間準耐火構造化
主要構造部である壁、柱、床、梁、屋根の軒裏の非損傷性が1時間の耐火性能を有する準耐火構造で設計する必要があります。 - 避難用バルコニーの設置
各住戸に1時間準耐火構造のバルコニーを設け、避難ハッチや幅員90cm以上の避難通路を確保することが求められます。 - 建物周囲の通路設置
建物周囲に幅3mの通路を設置。ただし、避難経路が十分確保されている場合には緩和が可能です。 - 防火設備の設置(防火地域・準防火地域のみ)
3階部分の外壁開口部に防火設備を設置する必要があります。
木三共がもたらすメリット
- コスト削減
木造は鉄筋コンクリート造などと比較して施工コストが低く、初期投資の負担を軽減できます。 - 設計の自由度
狭小地や変形地でも対応可能で、土地を最大限に活用できます。 - 収益性向上
3階建てにすることで、限られた敷地でも住戸数を増やし、家賃収入の最大化が期待できます。
木三共に潜むデメリット
- 建築費の上昇
2階建てと比較してコストが高くなる場合があります。 - 施工期間の延長
構造が複雑化するため、施工期間が長くなる可能性があります。 - 対応業者の限定
木三共の施工に対応できる業者が限られている場合があります。
まとめ
木三共は、近年の建築基準法の改正により注目されている木造建築の新たな形態です。コスト削減や収益性向上といったメリットがある一方で、建築基準を厳守する必要があり、施工期間の延長や対応業者の選定といった課題も存在します。
デベロッパーにとって、木三共は選択肢の一つに過ぎず、プロジェクトの条件や目指す方向性に応じた判断が求められます。十分な情報収集と専門家との連携により、適切な建築計画を進めることが重要です。