住宅性能表示制度でアパート建設を次のステージへ！競争力を高めるための建築ガイド
河田雄晴
1.業界の信頼性を揺るがす事件から学ぶ
2016年、某大手建設会社による耐震データ改ざん事件が明るみに出ました。このニュースは、建設業界全体に大きな波紋を広げました。結果として、住宅の性能や品質に対する消費者の関心はこれまで以上に高まり、信頼性のある住宅が求められるようになっています。アパート建設を手掛けるデベロッパーとして、この信頼性を確保するための手段として注目されているのが住宅性能表示制度です。
2. 住宅性能表示制度の概要
住宅性能表示制度は、消費者が住宅を選択する際の「安心材料」を提供するための仕組みです。この制度では、住宅の性能を第三者機関が客観的に評価し、「見える化」します。評価対象は以下の10分野34項目です。
10分野の主な内容：
- 構造の安定（耐震性能など）
- 火災時の安全（耐火性、防火性）
- 劣化の軽減（建物の耐久性）
- 維持管理・更新への配慮
- 温熱環境・エネルギー消費量（断熱性、エネルギー効率）
- 空気環境
- 光・視環境
- 音環境
- 高齢者配慮（バリアフリー）
- 防犯性
3. アパート建設に特化した項目の解説
(1) 耐震等級
地震大国日本では、建物の耐震性能が最重要視されます。耐震等級は以下の3段階で評価されます：
- 等級1：建築基準法で定められた最低基準を満たす（震度6〜7相当の地震に耐える）。
- 等級2：等級1の1.25倍の耐震性能（学校や病院などの避難所レベル）。
- 等級3：等級1の1.5倍の耐震性能（警察署や消防署レベル）。
デベロッパーとしては、等級2以上を目指すことで、入居者や投資家に対して安心感をアピールできます。
(2) 劣化対策等級
建物の耐用年数を延ばすための対策がどの程度施されているかを評価します。
- 等級1：通常の維持管理。
- 等級2：外壁や屋根材が10〜15年の点検を想定。
- 等級3：点検・補修間隔が30年とされ、長期使用を前提。
劣化対策等級3を取得すれば、建物の長寿命化が明確になり、資産価値を保ちやすくなります。
(3) 断熱等性能等級
エネルギー効率の高い住宅は、入居者の光熱費削減だけでなく、環境負荷の低減にも貢献します。
- 等級4（現行基準）：一定の断熱性能。
- 等級5〜7（ZEH基準）：高い断熱性能を持ち、太陽光発電なども活用する場合が該当。
断熱性を高めることで、冬場の暖房費や夏場の冷房費を削減し、入居者に選ばれやすい物件を提供できます。
4. 制度を活用した成功事例
事例：地方都市での高性能アパート建設
ある地方都市のデベロッパーが、住宅性能表示制度を活用し、他社との差別化に成功した事例をご紹介します。今回の事例では、耐震等級3と断熱等性能等級5を兼ね備えたアパートを新たに建設しました。この物件は、地震に強い構造とエネルギー効率の高い設計を実現しており、耐震性能では災害時の安全性を強調し、断熱性能では入居者の光熱費を削減できる点を訴求しました。
さらに、地域の広告媒体やSNSを活用し、「地震に強く、光熱費が抑えられるエコ住宅」というキャッチフレーズで積極的にPRを行いました。結果、物件の賃貸募集は開始からわずか1か月で全室が契約完了。入居者からは「家計に優しいだけでなく、災害時にも安心して住める」と高評価を受けました。
また、このアパートは長期的な視点でも評価され、地元の不動産市場では売却価値の高さが注目されています。住宅性能表示制度を通じて得られた高性能の「見える化」により、物件の競争力を大幅に向上させた好例です。この事例は、性能評価を積極的に取り入れることで、入居者や投資家の信頼を勝ち取り、市場での成功を収める可能性を示しています。
5. 制度導入の課題と解決策
制度を活用する際に直面する課題とその解決策を整理します。
- 課題1：コストの増加
解決策：高性能な部材を採用する場合の初期投資は増加しますが、長期的な修繕コスト削減や入居者確保率の向上によって回収可能です。
- 課題2：手続きの煩雑さ
解決策：制度に精通した設計事務所や施工業者との連携を図り、効率的な申請を進めましょう。
6. 結論：住宅性能表示制度を活用し、入居者に選ばれるアパートを提供する
国土交通省が2025年までに断熱等性能等級の基準引き上げを検討しているように、住宅性能表示制度の基準は進化し続けています。アパート建設において制度の最新動向を把握し、柔軟に対応することで、長期的な競争優位を確立できます。
住宅性能表示制度は、消費者に安心と信頼を提供し、デベロッパーにとっては競争力を高めるための強力なツールです。ぜひこの制度を積極的に活用し、アパート建設における成功を掴みましょう。
弊社が取り扱う軽量鉄骨造では、劣化対策等級3、耐震等級3の獲得が可能です。また、プランに応じて様々な仕様に対応し、施工までを承ります。
軽量鉄骨でのアパート建築の際には、ぜひ弊社までお問い合わせください。
